皆さんこんにちは、いつもお世話になっております。確定申告の時期も終わり、暖かくなってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。早速ですが19年度の税制改正がありましたので、不定期発行の神谷会計Now第二弾をお送りします。
19年度税制改正の概要
○資本金1億円以下の同族会社に対する留保金課税の撒廃
○事業承諾の円滑化に資する税制措置(種類株式の評価方法の明確化、相続時精算課税制度の拡充)
○減価償却制度の抜本的見直し(残存価額の撤廃、償却可能限度額の廃止、法定耐用年数の見直し等)
○中小企業等基盤強化税制の延長
○特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置見直し適用除外基準所得(課税所得十オーナー役員給与)を1,600万円(現行800万円)に倍増。【平成19年度から適用】
上記は一部ですが、この中でも一番大きく変わった減価償却制度の改正を今回のテーマとさせて頂きます。
今回のテーマは 減価償却制度の抜本的見直し
減価償却とは?
まず、基礎知識として減価償却の概要について説明します。
建物、機械装置、器具備品、車両運搬具などの固定資産は、時の経過によってその価値が減少していくため、このような資産を「減価償却資産」といいます。時が経過しても価値が減少しない土地や絵画などの資産は、「減価償却資産」ではないことになります。
この減価償却資産の購入代金(「取得価格」)は、購入したときに全額経費にすることはできません。このような資産は長期使用することができるため、その資産の使用可能な期間に分割して経費としていくことが合理的だからです。この使用可能な期間については資産ごとに定められており、これを「法定耐用年数」といいます。減価償却とは、「減価償却資産」の「取得価額」を「法定耐用年数」に渡り分割して経費としていく手続きのことをいいます。
※
使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満(一定の要件に該当する場合は30万円未満)ものは、減価償却せずにその取得価額の全額を経費にできます。
減価償却費制度が変わる!
平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産について、現行の法定耐用年数経過時点の「残存価格」を撤廃(10%→0%)し、法定耐用年数経過時点で全額(100%)まで償却可能になります。また、これにより定率法の償却方法が変わります。詳しくは下記の例を参照してください。
例:取得価格1,000,000円(法定耐用年数5年)の車を購入したとします。
「取得価格」:1,000,000円
「耐用年数」:4年(償却率 定額法0.25 定率法0.438)
定額法の場合
従来:償却可能限度額が「取得価格」の5%までだったため
1年目 1,000,000円×0.9×0.25=225,000円
2年目 1,000,000円×0.9×0.25=225,000円
3年目 1,000,000円×0.9×0.25=225,000円
4年目 1,000,000円×0.9×0.25=225,000円
5年目(1,000,000円−225,000円×4)−1,000,000円×5%=50,000円
減価償却費の累計額=950,000円
改正後:残存価格が撤廃されたため(備忘価額として1円をのこす)
1年目 1,000,000円×0.25=250,000円
2年目 1,000,000円×0.25=250,000円
3年目 1,000,000円×0.25=250,000円
4年目(1,000,000円−1円)−250,000円×3=249,999円
減価償却費の累計額=999,999円
定率法の場合
従来:帳簿価額に定率法の償却率を乗じていたため
1年目 1,000,000円×0.438=438,000円
2年目 562,000円×0.438=246,156円
3年目 315,844円×0.438=138,339円
4年目 177,505円−1,000,000円×10%=77,505円
5年目 100,000円−1,000,000円× 5%=50,000円
改正後:定額法の償却率の250%をもって定率法の償却率とすることとなったため、例の場合、定額法の償却率(0.25)の250%なので定率法の償却率は(0.625)となる
1年目 1,000,000円×0.625=625,000円
2年目 375,000円×0.625=234,375円
3年目 140,625円×0.625= 87,890円
4年目 52,735円−1円=52,734円
減価償却費の累計額=999,999円
上記のように従来は、取得価額の全額を経費とすることができなかったところが、今回の改正により法定耐用年数経過時点で全額(1円を除く)を経費とすることができるようになりました。
またこれに伴い平成19年度4月1日より前に購入した減価償却資産
の取り扱いですが、「95%まで償却が進んだ減価償却資産については、事後5年間で全額(100%)まで償却可能とする。」となりましたので従来どおりの償却をして、償却済みとなった翌事業年度より残りの5%部分を5年間の均等償却をすることになります。
何が変わるのか?
減価償却費は現金支出を伴わない経費であるため、その分、資金が会社内部に留保され次の設備投資への原資とするとすることができます。 よって今回の改正により、下のグラフのように、投下資本の早期回収が可能となり設備投資が必要な会社にとって追い風となることでしょう。
以上が今回のテーマ減価償却制度の抜本的見直しでした。質問等がございましたら、お気軽にお電話ください。これからも、不定期ながら随時発行していきますので、宜しくお願いいたします。最後まで読んで頂きありがとうございました。